I Am David(アイ・アム・デビッド)

名前だけが、少年の唯一の持ちものだった―

瞳が印象的なベン・ティバー

映画の舞台は第二次世界大戦後、共産主義政権が誕生した1950年代のブルガリア。
最愛の家族と引き裂かれて送還された強制収容所で、過酷な労働の日々を過ごしている12歳のデビッドは、同じ収容者であるヨハネの助けを借りて収容所を脱走する。

手にあるのは羅針盤とデンマークのコペンハーゲンのある人物に届けるように彼に託された一通の手紙だけだった…。

幼少期から人生の大半を強制収容所で過ごしたデビッドにとってコペンハーゲンはおろか、デンマークという国すらどこにあるのかわからない。

「外界」での体験が何もかも初めての少年は幾度のトラブルに巻き込まれながらも輸送船に紛れ込み、ギリシア、イタリア、スイスへと向かうのだった。

ようやく辿り着いたスイス国境で彼は芸術家・老婦人ソフィーと出会う。息子を戦争で亡くしたソフィーは、長期間の収容所生活で人間不信に陥り、もはや笑うことすらなかったデビッドの心を徐々に開いていく。

そんなある日、ソフィーは彼を書店に連れて行く。店内で彼の目を引いたのは第二次世界大戦後に夫、そして息子と離れ離れになってしまったという女性の本。彼がその表紙に見たのは、彼を誰よりも愛してくれた母親だった…。

デンマークに母がいることを知ったデビッドは、周囲の協力を得て、一路母親の待つコペンハーゲンへと飛行機で向かう。そして、滑走路へと降り立った彼は母親と涙の再開を果たすのだった。

制作・キャスト

デンマークで出版され、児童文学として世界中でベストセラーとなっているアン・ホルムの同名小説が原作の本作品。主人公・デビッドを演じるのは、映画「リトル・ダンサー」のスタッフが発掘した12歳の新星ベン・ティバー。

本作品の献身的な演技が、後の「パッション」でキリストを演じるきっかけとなったジム・カヴィーゼル、アカデミー賞に2度ノミネートされたジョーン・プロウライトらの存在感ある俳優陣が脇を固める。監督・脚本はポール・フェイグ。

制作はイングリッシュ・ペイシェント(THE ENGLISH PATIENT:1996年)やHOTEL(2001年)のアンドレア・ボレッラ。

レビュー

子供向けのほのぼのした作品かと思いきや、レイバーキャンプの過酷な日々を日常として淡々と見せつけることで、空腹と疲労に包まれた少年の旅そのものもスリリングなものとなり、背景の美しさがそのコントラストを一層際立たせている。

多くの困難に見舞われながらも旅を通じて、自然の美しさに感動する心や人を信頼すること、そして人を許す心をも獲得していく少年の心情と見ている側が同化し、ともに旅をしているかのような錯覚にとらわれていく見事さが秀逸。TV出身監督らしく、スピーディな展開も、ラストで感動の大喜利が待っているのも心地よい。ブルガリア、ギリシャ、イタリア、スイス、デンマークと5か国に渡るロケで収めた美しい風景も見逃せない。

ただし、原作のデッビドは、収容所の知識階級から多くの言語を学んだ結果、伊・仏・独・英の四ヶ国語を会得し、そのイタリア語は富裕層をして「フィレンツェの貴族も真っ青」と言わしめるほどであった。そして、その言語力が時には彼を助け、ある時は彼への疑念を強めることになったが、映画では全編英語となっている。

また、原作は「一人称」で書かれているため、人間不信で表情が乏しくとも、彼の内面は起伏が非常に激しいものであったことが分かるが、映画では彼を客観的に見る立場のため、その内面を推し量ることは難しい。本作品を鑑賞した後には、原作も合わせて読むことをオススメしたい。

舞台となったブルガリア王国。ヨーグルトや琴欧州でも有名な同国に興味を持った方は、在ブルガリア日本大使館で情報をチェック!
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